活字中毒者のつぶやき

【books】「日本金融システム進化論」を読んで


<結論>
金融株を持っている人は絶対に読むべき名著でしょう。


<感想>
長い本だが非常に読みやすい。
基本的にWW2以前〜現在(正確には2003年ぐらいか)までの
日本の金融システムを
家計部門
金融部門
企業部門の3つにわけて
時代の流れとともにどのように変化していったかを
分析した本です。


ちなみに最後には日本語版の発刊にあたり
現在の金融システムの枠組みについての分析も行われています。


第1章〜第7章までは
日本の金融システムの歴史について少しでもがじったことが
あれば、どこかしらで聞いたことのある話がおおく
あまり新鮮味がないかもしれません。
ですが、復習には役に立ちますね。


第8章以降日本の金融システム自由化の流れを
描写していったあたりからあまり聞いた(読んだ)ことのない
分析結果が提示されおもしろくなってきます。


あまりネタバレはよくないですが(笑
個人的に「お!」とおもったところをいくつか。


・金融自由化は70年代から徐々にはじまった。


・きっかけはオイルショックによる高度経済成長の鈍化とその不況を克服するために政府が赤字財政=国債発行に踏み切った。その国債を大量に消化するために債券市場を開放=自由化したこと。


・他の規制はそのままに債券市場を開放したために、銀行から、資金需要家の大企業が離れていき(=社債市場での資金調達にシフト)、銀行が新たな相手を模索しはじめたことが、80年代のバブル(著者はこの表現は正しくないと思っているようだが)における不動産業などへの過剰融資の遠因。つまり部分的な規制緩和が逆効果を生んだ。


・金融ビッグバンへの評価は高い。ビッグバンの進行と同時に進んだ日本の金融危機についても仕方ないとおもっている?世界各国の金融における同様の規制緩和時においても、大半の国で金融危機が起こっていることから日本の金融危機もその流れと同列においている。


・この文脈の中で、日債銀などの長銀の破綻の原因もバブル崩壊による不良債権の増加が直接の原因ではなく、金融ビックバンの進行により、従来すみわけが行われていた金融機関同士の競争が激しくなり収益性を落としたことが直接の原因であると述べている。


・つけたしですが、住専の問題についての解説もなかなかおもしろかった。ここまで詳細にはしらなかったもので。


<総評>
全体の半分は復習。全体の半分は刺激的。
2800円はしたがなかなかの好著というべきではないでしょうか。
誤植はなんとかしてほしいですが(笑


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